【千香子の闇夜の部屋 vol.28】
第一章 株と相続・事業承継
◆第三項 「自社株の後継者への集中」(2)相続時精算課税制度
前回は、暦年贈与についてお伝えしました。
今回は「相続時精算課税制度」についてお伝えしていきます。
この制度は60歳以上の父母または祖父母など(贈与者)から、18歳以上の子または孫(受贈者)が受け取る贈与について、2,500万円の「特別控除」を適用して贈与税額を計算し、将来的に贈与者の相続が発生した際に、「贈与税」と「相続税」を相殺する仕組みです。
生前贈与を18歳以上の子または孫が受けた後、父母または祖父母などが亡くなった際に相続税の計算をするとき、相続時精算課税制度を適用した贈与財産の価額(贈与時の時価)を相続財産の価額に加算して相続税額を計算します。
2023年5月に税制改正があり、2024年1月からこの「相続時精算課税」においても、【年間110万円の基礎控除】が創設されました。これにより、相続時精算課税での控除枠が「2,500万円」と「110万円」の2つになりました。
(※暦年贈与の課税 基礎控除110万円とは別で、相続時精算課税内での制度です。)
新たな基礎控除の創設によって、2024年1月1日以降、年間110万円までは贈与税はなく申告も不要となりました。
改正後の税額計算は、次の通りです。
【(贈与財産の価額-基礎控除110万円)- 特別控除2,500万円】×20%=贈与税額
例1)父親から毎年500万円×5年間 【合計2,500万円】の贈与があった場合
(500万円-110万円)×5年間=1,950万円 < 2,500万円(特別控除)
特別控除の2,500万円を下回りますので、贈与税はありません。
さて、次の場合はどうでしょうか。
例2)その後父親が他界し、相続財産が7,000万円あった場合
上記1,950万円+7,000万円=8,950万円に対して、課税されます。
※相続時精算課税制度を適用した「贈与財産」の価額(1,950万円)を相続財産(7,000万円)に加算して相続税額を計算するためです。
例3)毎年700万円を5年間 【合計3,500万円】の生前贈与があった場合
(700万円-110万円)×5年=2,950万円 > 2,500万円(特別控除)
↓
特別控除分の差し引き 2,950万円-2,500万円=450万円
↓
450万円×20%(税率)=90万円の贈与税
上記のようになります。
なお、例3のケースでその後相続が発生した時は、相続財産から支払った90万円の贈与税は控除されます。
相続時精算課税制度のまとめ
相続時精算課税制度では、一人の贈与者からの贈与合計額が2,500万円になるまでは特別控除が受けられることに加え、今回(2023年5月)の改正で、【年間110万円の基礎控除】も新設されました。また、この制度では贈与者ごとに利用でき、適用対象になる贈与財産の種類(金額や贈与回数)の制限も設けられていません。
ただし、注意すべき事項があります。「相続時精算課税制度」を選択した受贈者は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの贈与税申告期間内に、「相続時精算課税選択届書」を提出する必要があります。この制度を選択するときは、届書を忘れずに提出してください。
「相続時精算課税選択届書」の書式は国税庁のHPからプリントアウトできますよ!
次回は「遺言」についてお伝えします!
- ※参考資料 国税庁HP 中小企業庁HP